遺言書がある場合の遺産分割協議書|必要・不要を解説

更新日:6 日前
「遺言書があれば遺産分割協議書は不要なの?」と疑問に感じる方は少なくありません。結論として、遺言書の内容や相続する財産、相続人全員の合意などによって、遺産分割協議書が必要になるケースと不要になるケースがあります。有効な遺言書ですべての遺産の分け方が指定されていれば、原則として遺産分割協議は必要ありません。一方、遺言書に記載されていない財産がある場合などは、協議書が必要になることがあります。この記事では、具体例を挙げながら分かりやすく解説します。
目次
1.遺産分割協議書と遺言書の基本
1-1.遺産分割協議書とは?
遺産分割協議書とは、亡くなった方の財産について、相続人全員で話し合い、誰がどの財産を取得するのかを決めた結果を書面にしたものです。遺言書がない場合、法定相続人が遺産の分け方を話し合う「遺産分割協議」を行うことが基本となります。大阪法務局も、遺産分割協議には相続人全員の合意が必要で、協議の結果を記載した書面が遺産分割協議書であると説明しています。
遺産分割協議書は、単に家族間で内容を確認するためだけの書類ではありません。不動産の相続登記や金融機関での相続手続きなどで、遺産の取得者を証明する資料として利用されることがあります。そのため、相続人や財産を正確に確認したうえで作成することが重要です。
1-2.遺言書があると何が変わる?
遺言書がある場合、原則として、遺言者が残した意思に沿って遺産を分けることになります。つまり、遺言書によって特定の財産を誰に相続させるのかが有効に指定されている場合、その財産について改めて相続人全員で遺産分割協議をする必要はありません。裁判所も、有効な遺言書によって処分が決まっている遺産は、遺産分割の対象にならないと案内しています。
ただし、「遺言書がある=必ず遺産分割協議書が不要」とは限りません。遺言書に記載されていない財産が残っている場合や、遺言とは異なる内容で相続人全員が合意した場合などには、遺産分割協議が必要になることがあります。まずは遺言書の内容と、実際に残されている財産を照らし合わせることが大切です。
2.遺産分割協議書が原則不要なケース
2-1.遺言書ですべての遺産の分け方が決まっている場合
遺言書によって、預貯金、不動産、株式など、相続の対象となる財産について誰が何を取得するのかが明確に指定されている場合、原則として遺産分割協議書は必要ありません。たとえば「自宅不動産を長男に相続させる」「預貯金を妻に相続させる」など、遺言書によって各財産の取得者が明確になっていれば、遺言書をもとに相続手続きを進めることができます。
ただし、実際の相続手続きでは、金融機関や法務局などに提出する書類が個別に異なる点には注意が必要です。また、遺言書そのものが有効な方式で作成されているか、対象となる財産が正確に特定されているかも確認する必要があります。「遺言書があるから何も準備しなくてよい」と考えず、遺言書の内容と各手続きの必要書類を確認しましょう。
2-2.遺言執行によって相続手続きを進められる場合
遺言書に遺言執行者が指定されている場合には、その遺言執行者が遺言の内容を実現するために必要な手続きを行うことがあります。遺言によって財産の処分方法が明確に決められているのであれば、相続人同士で改めて遺産分割協議を行わず、遺言書に基づいて手続きを進められるケースがあります。
重要なのは、遺言執行者がいるかどうかだけで「遺産分割協議書が必要か」を判断しないことです。遺言書の内容、財産の種類、相続人の状況、さらに手続きを行う金融機関や法務局などによって必要書類が変わる可能性があります。法務省も、相続の形態によって必要となる書面が異なると案内しています。
そのため、遺言書を確認したら、遺言執行者の指定の有無と、遺言で処分方法が決められている財産の範囲を確認しておくことが重要です。
3.遺言書があっても協議書が必要になるケース
3-1.遺言書に記載されていない財産がある場合
遺言書があっても、すべての財産について取得者が指定されているとは限りません。たとえば、「自宅不動産を長男に相続させる」とだけ書かれていて、遺言書作成後に取得した預金や株式について何も記載されていないケースがあります。このように遺言書で処分方法が決まっていない財産については、相続人による遺産分割協議が必要になる可能性があります。
裁判所も、有効な遺言書で処分が決まっている遺産については遺産分割の対象にならないと説明しており、反対にいえば、遺言書で処分が決まっていない遺産については別途分割の問題が生じます。
そのため、相続が開始したら、遺言書だけを確認するのではなく、預貯金、不動産、株式、車などの財産を一覧にして、遺言書に記載されているかを確認しましょう。漏れている財産があれば、その財産について遺産分割協議が必要か検討します。
3-2.相続人全員が遺言と異なる分け方に合意した場合
遺言書が存在していても、相続人全員がその内容とは異なる遺産の分け方について合意し、遺産分割協議を成立させるケースがあります。この場合、実務上は遺言書の内容だけでなく、相続人全員の合意内容を証明するために遺産分割協議書を作成することがあります。
ただし、遺言の内容や遺贈の有無、受遺者がいるかどうかなどによって扱いが変わるため、「相続人全員が同意すれば必ず自由に変更できる」と単純に考えるのは危険です。特に、法定相続人ではない人に財産を渡す「遺贈」が含まれている場合などは、慎重な確認が必要です。
また、相続人全員で合意した遺産分割協議書が成立している場合、その内容に不満があるからといって、通常の遺産分割調停を改めて申し立てることはできないと裁判所が案内しています。
4.遺産分割協議書が必要か判断するときの注意点
4-1.遺言書の内容と効力を確認する
遺産分割協議書が必要か判断するときは、まず「遺言書があるか」だけでなく、「どのような内容の遺言書なのか」を確認することが重要です。具体的には、遺言書が法律上有効な方式で作成されているか、誰にどの財産を相続させると書かれているか、すべての財産が対象になっているかなどを確認します。
特に自筆証書遺言の場合、全文、日付、氏名の自書や押印など、法律上の要件があります。法務省も、自筆証書遺言について一定の要件を満たす必要があると案内しています。
また、遺言書の内容が曖昧で、どの財産を誰が取得するのか判断しにくい場合は注意が必要です。遺言書の存在だけで判断せず、実際の財産と照合したうえで、必要に応じて弁護士や司法書士などの専門家に確認してもらうと安心です。
4-2.相続手続きごとに必要書類を確認する
遺産分割協議書が必要かどうかは、相続の方法だけでなく、どの手続きを行うかによっても確認が必要です。たとえば、不動産の相続登記と預貯金の解約では、それぞれ提出を求められる書類が異なる場合があります。
法務省も、協議による遺産分割の場合には遺産分割協議書、裁判所の調停・審判による場合には調停調書や確定した審判など、遺言による場合には遺言書など、相続の形態によって必要な書面が異なると説明しています。
そのため、「遺産分割協議書が法律上必要か」という視点だけではなく、「今回の相続手続きで提出を求められるか」という視点も大切です。手続きをする前に、提出先へ必要書類を確認しておけば、書類の作り直しや手続きの遅れを防ぎやすくなります。
5.遺産分割協議書を作成するときのポイント
5-1.協議書に記載する内容と注意点
遺産分割協議書を作成する場合は、誰がどの財産を取得するのかを第三者が見ても分かるように、できるだけ具体的に記載することが重要です。不動産なら所在地や地番、建物の種類・構造などを登記事項証明書に基づいて記載し、預貯金なら金融機関名、支店名、口座の種類などを確認して特定します。
また、遺産分割協議書を作成する前に、相続人を漏れなく確定させることも大切です。遺産分割協議は相続人全員の合意が必要となるため、相続人の一部だけで作成した協議書では問題が生じる可能性があります。
さらに、実際の相続手続きで提出する場合には、署名・押印や印鑑証明書など、提出先が指定する形式を確認しましょう。財産の記載ミスや相続人の漏れは手続きのやり直しにつながるため、作成後に内容を入念に確認することが大切です。
5-2.専門家への相談を検討したいケース
遺言書がある相続では、「遺産分割協議書が必要なのか」という判断だけでなく、遺言書の効力、遺言の対象となる財産、相続人の範囲、遺留分など、複数の法律問題を確認する必要がある場合があります。
特に、遺言書の内容と相続人の希望が異なるケース、遺言書に記載されていない財産があるケース、相続人の数が多いケース、不動産や会社株式など複雑な財産があるケースでは、自己判断で手続きを進める前に専門家へ相談することをおすすめします。
遺産分割協議書の作成や相続登記については司法書士、相続に関する紛争や遺言の解釈など法律問題については弁護士など、内容に応じて相談先を選ぶとよいでしょう。なお、法務局では遺言書の内容に関する法律相談には対応していないため、内容について疑問がある場合は法律の専門家への相談が案内されています。
遺言書がある場合でも、「遺産分割協議書は絶対に不要」とは限りません。遺言書で財産の分け方がすべて決まっているのか、記載されていない財産があるのか、相続人全員で別の分け方に合意するのかを確認することが、必要・不要を判断するポイントです。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の相続案件に対する法律上の助言ではありません。実際の相続手続きでは、遺言書の内容や財産、相続人の状況を確認したうえで、必要に応じて専門家へご相談ください。
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